部屋をよく見もせず返事してしまったけど。
……待って。
言われてみれば、見覚えあるような、ないような?
デジャブ?
でもそれってありえないよね?
「ほんとに何にも覚えてないんだね」
わざとらしいため息。
「あの夜は、素直で可愛かったのに」
「へ……」
“あの夜”って?
私、西野と何かした……?
思い出すことなんて、西野と夢の中でキス……したことくらいしか……。
「どうやったら思い出す?」
西野の手がほっぺたに触れた。
あっという間に、チリチリ焼けるように熱くなる。
指先が、ほっぺたから口元に移動して……。
目の前が、ふと暗くなる。
あ、この感じ……──────。
“だめ”。
頭が警笛を鳴らしてるのに、頭はいうことをきかない。
なんで?
だめだけど、心のどこかでしてほしいって思ってるからでしょ。のちのち傷つくのは自分なのに。
──────“ 西野はやめとけ ”。
目を閉じる寸前、
陸人の呆れた顔が脳裏に浮かんだ。



