無気力オオカミくんは、私だけに夢中。



閉じるの?

なんで?と思いつつも、西野に見つめられると、いつも頭がぼうっとして体が勝手にいうことを聞いてしまう。




「そしたら、手出して」

「手……」

「グーじゃなくて開いて」

「う、うん。……ひゃっ」



西野の手が!当たってる!



びっくりして目を開けてしまった。
思いのほか距離が近くて、また叫びそうになる。




「勝手に目開けないでくれる」

「ご、ごめんなさ──────」




謝罪の言葉と同時、手のひらにひんやりとした何かが触れて
視線を落とした直後、息が止まりかけた。




「えっ、これ……えっ!?」



西野が買ってくれたリップ……。




「私、失くしたと思ってて……。えっ。なんで西野が持ってるの?」

「べつに俺が持ってたわけじゃない。今見つけてきた」

「え、今……?」



ますます意味がわかんないんだけど。



「どういうこと?」

「この店の造り、なんか見覚えない?」

「あるわけないよ。西野のバイト先なんて初めて来たし……」