西野が私を抱き寄せた。
泣いてるのを隠すみたいに。
「利奈が見つけた猫、そんなに可愛かった?」
「へ……」
西野の腕の中にいるせいで、思考回路が鈍ってる。
猫。
そうだ。
猫を見てたって、さっき西野に嘘ついたんだ。
どういう意図で聞いてるんだろう。
嘘だって見抜いてるの?
それとも、西野、猫好きなの?
「か……可愛いかったよ?」
「……そっか」
「うん……」
「夢中になってたもんね。スカートが汚れてるのに気づかないくらい」
西野、これは信じてる……よね?
「……えと、西野も猫好きなの?」
「好きだよ。なんか、利奈みたいで」
ふいに頭を撫でられて、心臓をゆるく掴まれたみたいになった。
やっぱり怖い。
息をするように好きとか言って、驚くほど慣れた手つきで触れてくるから。
“トクベツ”を、ちっとも感じさせない。
感じさせないのに……。
「俺もその猫見たいから、一緒に探していい?」
西野のこういうところが、女の子を病みつきにさせるんだと思う。



