「わ、私は人と待ち合わせしてて……」

「植え込みをのぞきながら?」

「えっと……。猫がいてね?茂みの奥に。それを見てたんだよ」




とっさに考えた嘘に、西野は「へぇ」と短く返事をした。
信じる信じないの前に、そもそも興味がないって感じでそっけない。




「手、泥ついてんじゃん」

「う……」

「スカートのすそも汚れてるし。女子ならそんくらい気つかえば?せめて、地面につかないように持ち上げるとかさ」




スカートのすそ……。

言われて気づく。

探すのに夢中で、気にも留めてなかった。




「利奈みたいなだらしない女、マジで嫌い」



西野の冷たい声。

うんざりって感じの表情。




ズキッ、どころじゃない。
鋭い刃物で勢いよく胸を貫かれたみたい。




「あはは、だよね……」




笑う以外に、傷ついた心を隠す方法が思いつかなかった。

下手に長いセリフを返せば、言い終わらないうちに泣いてしまいそうで。