トイレに行く必要もなくなったし、このまま教室に戻ればいいんだけど、前を西野が歩いてるし。
追いかけていいのか悪いのかわからなくて数秒間その場に固まっていたら、他の教室から出てきた女の子が西野に抱きついたから、さらに身動きが取れなくなった。
相手は、絹川雛子ちゃん。
立ち姿でわかっちゃう。
すらっとしてて、骨格から既に完璧だから。
西野が隣に並ぶと、芸能人のカップルみたい。
二人の周りだけ違う空気が流れてる。
前にも思ったけど、釣り合いが取れてるって、まさにこういうこと。
西野はいつも通りそっけないのかと思いきや笑顔を見せて、雛子ちゃんに寄り添うようにして歩き始めた。
……ほんと、誰?
西野は女の子の前じゃ笑わないって噂流したの。
誰にでもするんだね。
陸人が言ってたとおり……。
もうやだ。
西野にふり回されるのやだ。
西野のこと考えたら、いつも胸がズキズキする。
もう、いいかな。
このまま見つからなくても。
西野が買ってくれたリップ、なんて……。
持ってたら西野のこと思い出しちゃうし。
わざわざ探しに行かなくたって……いいよね。



