「怪我してない?手のひら擦りむいたりとか、手首ひねったりとか」

「う、うん、ダイジョーブデス」

「ん。ならいい。頭打たなくてよかったね」



大げさなくらい優しい声。
耳元で囁かれると、真面目に脳が溶けそう。


ほわんとした気持ちになって、思わず目を閉じた


──────直後。



べりっと体を剥がされたかと思えば


「いたっ」


私の頭めがけてチョップが落とされた。



「廊下は走んな、バーカ」



ひどい。
無事だとわかったとたん、この仕打ち。
とはいえ、悪いのは私だ……。



「ううっ、以後気をつけます。えっと、西野は怪我してない?思いっきりぶち当たってごめんね……」



控えめに見上げると視線がぶつかって、綺麗な二重に縁どられた瞳にすうっと吸い込まれる。




「俺はへーき。……だけど、」

「……だけど?」

「……」

「……?」



わずかに眉をひそめた西野。

え、なに?