西野の甘い匂いはやけにリアルだった。


西野の影がかかったかと思えば、唇をふさがれる。

ぼうっとした頭の中にじん…と痺れが走って、まぶたがゆっくり落ちていく。



角度を変えながら少しずつ深く、なって……



「んん……っ」



息が苦しくなると、わずかな隙間とタイミングを与えてくれて。

それでも酸欠なのかなんなのかクラクラがとまらない。


近いし熱いし苦しいし、でも心地よく感じる。



西野の体温……。


脳がバグを起こしたらしく、クラクラさえ気持ちいいと感じてしまった。



いざ唇が離れると、物足りなさを感じて思わず見上げてしまう。



「……なに?」

「もう終わり……?」


「……それは、続きをねだってんの?」

「続きって、ゆうか……キス、もっとしたい……」




西野は一瞬、ためらうように体を離した。

前髪を無造作にかきあげて、ため息をつく。



「まああいいや……。俺も、夢の中ってことで」



落とされた声は聞き取れず。

考える暇もないまま、また唇が重なった。



西野のキスに酔わされながら、うとうと、真っ暗な世界に吸い込まれていく。



こんな夢見たなんて西野にはぜったい言えない……。


最後にそんなことを思いながら、意識を手放した。