「ほら、もう教室戻りな。好きじゃない男とこんなことするのイヤなんでしょ」




手が解放された。

これで自由に動ける、逃げれる……

けど、西野の熱が移ったみたい。




「イヤじゃないから困ってるんじゃん……」




まともな状態なら絶対口にしないセリフが、ぽろりとこぼれ落ちた。

小さかったけど、たぶん自分の声。

西野が目を丸くする。
瞳孔、めちゃくちゃ開いてる。




「利────、」

「え、う……あ、お大事に……っ!!」



自分でも感心するほど素早い動きでベッドから飛び降りた。



何言ってるの
何言ってるの
何言ってるの。



首から上があつくてあつくてしかたない。

恥ずかしすぎて泣きそう。



西野といると死ぬほどドキドキするけど、“恋”にはしたくないんだよ。

顔が好きなだけ。

一般に言うイケメンで、かつ、私のどタイプな顔だから。



さぞ真っ赤であろう顔面を覆いながら、熱を冷まそうと水道へ走った。



顔の他に好きになる要素なんてない、から、

これは恋じゃない、

恋じゃない──────。