教室に戻った頃には、もうすっかり教室掃除は終わっていた。


「遅かったじゃん!何してたのよ〜」


私と佐倉を見て、すかさず駆け寄ってきた萌菜は分かりやすくニヤニヤしてる。


何もなかったって言ったら嘘になるけど。
でも、佐倉に付き合ってるふりをしてもらうことになった……なんて


弥一との関係すら話してない今、

どう考えても言えない。


弥一とのことは、ちゃんと萌菜に話さなくちゃ行けないと思いつつ、なかなか言えずにいた。

今度、萌菜がバイト休みの日に聞いてもらおうかな。


「別に、なんもないよ!」


結局、私の口から出たのはそんな言葉で
萌菜に通用しないことくらい分かってる。

案の定、


「嘘ばっかり、私を欺こうなんて10年早い!」


とか言い出す。


そんな萌菜に、隣で私たちのやり取りをぼんやり聞いていた佐倉が、私の手をギュッと握った。


「俺ら、付き合ったから」

「っさ、佐倉……?」


平然と、堂々と、ハッキリ交際宣言されて、演技だって分かってるのにドキッとしてしまう。


「うっそ……!まじで言ってる?」


驚く萌菜が視線を私に向けるから「うん」と曖昧に微笑んで、ちょっとだけ罪悪感。