弥一のせいで泣いてたくせに、優しくされるとすぐに浮かれて。


バカじゃねーの?って、突き放せばいいのに。



「なんで、そんな優しいの……佐倉」


だから、甘えてしまいそうになる。
佐倉のことで頭の中いっばいにして、弥一のこと忘れちゃいたいって思ってしまう。


佐倉を好きになりたいって思ってしまう。


だけど、それじゃ


弥一と同じだ。



「お前が傷付くのは、俺がいやだ」



”ただ、そんだけ”

そう言った佐倉に、自分のバカさ加減が浮き彫りになった気がした。


都合いい女でもいいから、弥一のそばにいたいなんて……バカだ。幸せになりたいって思ってるくせに、心の中にある欲を捨てきれないくせに


その場の感情で流されちゃいけない。


「ね、佐倉……?」

「ん?」

「バカな私が、もしまた間違えそうになったら、そのたび連れ戻してくれる?」

「……超めんど」


なんて言いながら、上履きに履き替える佐倉。
だけどそれが本心じゃないことくらい知ってる。


「私が傷付くのは、嫌なんでしょ?」

「……っ、あんま調子のんなよ!」


佐倉の照れた横顔に、なぜか嬉しくなる。