そう繰り返しても、リッキーはどこ吹く風。犬に笑顔があるのかはわからないが、にんまりと笑っているように見えた。
一生懸命な加賀美と、とぼけた様子のリッキー。その構図がおかしくて笑いが込み上げる。
普段ができる男のイメージだけに、その落差はかなり大きい。
「こら、星。なに笑ってるんだ」
クスクス笑う野々花に気づき、加賀美が涼しげな目を鋭くさせる。相当不満そうだ。
「すみません、つい」
そう謝っても、笑うのを止められない。肩をふるふると震わせていると、ついに加賀美は野々花の頭をコツンと軽く小突いた。
「ごめんなさい」
頭を押さえて加賀美を見上げる。するとそこには、思いがけず優しい眼差しが待っていた。
心臓が軽く跳ね、そこから目が逸らせなくなる。ゆっくりと瞬きを繰り返していると、加賀美が徐々に顔を近づけてきた。



