「だって、面倒くさいんですもん」
「め、面倒くさいって……」
開いた口がふさがらないとは、まさにこれだろう。
情けなく口をパクパクし、かなり間抜けな顔になった。
「聞いた方が早いじゃないですか。いつだったか星さん、言ってましたよね? 仕事は効率良く進めるのが肝心だって」
たしかにそう言った記憶はある。仕事をスピーディーに進めるのは大事だと。
(でもでも! ちがうの! 間宮さんの場合はそれ以前の問題なのー)
思わず叫びたくなった。
昨年の春に入社した瑠璃は、経理部から異動して三ヶ月が経過しても、まったく進歩がない。
本人によると、数字を扱う地味な経理より、クリエイティブな職務に適性があるのだとか。でも実際のところ、経理部で使えないからマーケティング部に異動させられたとの噂が飛び交っている。経理部とマーケティング部との部長の力関係で、押し切られた感も否めない。
経理の部長は、会社を立ち上げた社長と変わらぬ勤続年数なのだ。仕事ができるとはいえ、入社して五年の加賀美もさすがに人事については意見できないだろう。



