カタカタとキーボードを打っていく。
【本日は仕事が立て込んでいるため、せっかくですが】
そこまで入力して、即座にバックスペースを連打。加賀美のせっかくの気遣いを足蹴にするつもりか。自分を叱責する。
純粋に自分を心配してくれている加賀美に対し、それは失礼ではないか。
(それならどうする?)
自分に問いかける。断らないのであれば、行く選択以外になにがある? いや、ない。
そのとき不意に、今朝、野々花の鼻先をかすめた加賀美の爽やかな香りを思い出した。
目眩がすると同時に襲われる動悸。
(やだ、私、やっぱり変態なの?)
ぶんぶん頭を振り、簡潔に【承知いたしました】と入力し、自分に悩む隙を与える前に送信ボタンを押した。



