「本当にすみません。仕事に戻ります。また一生懸命がんばりますので」
この失態は仕事で返そう。それしかない。
そう決意し、足を一歩踏み出そうとしたとき。
「今夜、食事でも行こうか」
「えっ? はい?」
今、加賀美はとんでもないことを言わなかったか。
野々花の目が点になる。
「じっくり話を聞いた方がよさそうだからね」
加賀美はふわりと笑う。
その笑顔にくらっと目眩を感じるばかりか、胸を打ち抜かれた気がした。それも超高速の弾丸だ。
「あとで星宛に社内メールを送るよ」
「えっ、なんのメールですか?」
焦って聞き返す。
ところが加賀美は野々花の質問に答える気はないらしく、思わせぶりな笑みを浮かべ、「じゃ」と爽やかともいえる去り方で備品庫を出ていってしまった。



