一度ならず二度までも、加賀美に妙なところを見られてしまった。同じ場所を選んだ野々花が迂闊なのもあるが、タイミングの悪さも恨めしい。
「よほど腹に据えかねてるようだね」
「それはその……申し訳ありません!」
腰を折り曲げ、とにかく謝った。
昨夜は退勤後だから問題がないとして、今は立派な仕事中。タイムカードを打刻したあとなのだから、ここで油を売るのはいかがなものか。
「どうして謝る?」
「仕事中なので……。それに、二日連続で部長に変な声を聞かせてしまいましたから……」
あの雄叫びを二度も聞かれたのかと思うと、恥ずかしさを通り越していたたまれない気持ちになる。
加賀美は「変な声ね」と言いながらクククと肩を揺らした。
笑いごとじゃないのにと思いながら、でもそうして笑ってもらった方がいいのかもしれないとも思う。あまりにも情けない自分の身の上は、この際笑い飛ばした方が諦めもつく。
(私の恋よ、グッバイ……だ)
なんて情けない終わり方なのだろう。告白すら許されない。悲しすぎて涙も出ない。



