望は艶やかな頬を上気させながら、隣のスツールを野々花のために引いてくれた。


「はぁ……ほんとに疲れちゃった」


やっとといった様子で野々花がスツールに座ると、望は「こてんぱんにされた感じね」と真っ赤なルージュを引いた唇で笑う。


「もう私にはあの子の教育は無理だよ……」


すっかり自信喪失だ。

それに、あんなにへらへらと自分の仕事をほかの人に振れるのも信じられない。
たった二歳しか違わないのに、小学生、いや幼稚園児を相手にしているような感覚だ。


「よしよし」


望に頭を撫でられ、思わず泣きそうになった。
こんな夜はたっぷりと糖分を補給したい。とびきり甘いカルーアミルクをマスターに注文した。


「それで、今日もまた例の雄叫びをあげてきた?」


カクテルに添えられていたさくらんぼを指先で弄びながら、望がおもしろがる。