独占欲強めの部長に溺愛されてます


「あなたなんか、間宮さんなんか……! もーっ、おバカーー!」


両手に拳を握り、腰を折り曲げ、身体に残った酸素すべてを放出した。ロングブレスダイエットもびっくりの効果が期待できそうなほどだ。
肩を上下させ、はぁはぁと息を荒げる。

このところ毎日、野々花は退勤時間を大幅に過ぎてからここへやって来る。こうでもしてストレスを発散しないと、生きていける気がしない。

ひとり暮らしのアパートでは大声を出すわけにはいかず、思い立ったのがこの場所だった。
一日の仕事の終わりに鬱憤を晴らしていかなければ、イライラが募るだけ。自宅にまで引きずるのは嫌だった。

まだ足りないと、もう一度息を吸い込み、思いのたけを声に込める。


「何度言ったらわかるのよーーーー! ちゃんとメモくらい」


そこまで言ったところで、突然目の前が明るくなった。
いきなり言葉を止めたせいで、喉の奥がヒュッと鳴る。キョロキョロと視線を彷徨わせた。

(え? なに? どうして?)

なにが起こったのか一瞬わからなかったが、誰かが電気をつけたのは間違いない。