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クレアストは地上四十階建て、地下二階のタワービルに入居している。それは三階から上がミラーガラスになっており、築二年という新しさもあって周辺ではとても目立つ。
大小さまざまな企業が入居し、クレアストは三十四階から三十八階に事務所を構える。
瑠璃の尻拭いを終えた野々花は、帰り支度をしてからある場所へ向かっていた。
三十四階の一番奥。〝備品庫〟と呼ばれる部屋は、この頃、野々花がよく通っている場所である。
二十畳ほどのスペースにあるスチール棚には、事務用品や使わなくなった備品類が無造作に置かれ、ちょっと埃っぽい場所だ。
午後八時。この時間にここへ来る人は誰もいない。
ドアを開け、電気もつけずに中へ足を踏み入れる。そして部屋の隅まで行くと、胸いっぱいに大きく息を吸った。
「ほんっとにいい加減にしてーーーー! 私をなんだと思ってるのよーーーー! 仕事をなめるなーーーー!」
息を吐き出すと同時に、お腹の底から声の限りに叫ぶ。



