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その夜、野々花はいつものように加賀美と連れ立ってリッキーの散歩へ出た。
どことなく湿気を含んだ空気は、雨を予想させる。普段、一等星くらいなら見える星空にも薄い雲がかかっている。なるべく早く切り上げた方がよさそうだった。
「リッキーの扱い、ずいぶん慣れたみたいですね」
最初の頃こそリードを引っ張りコントロールが効かないリッキーだったが、今では加賀美の隣を同じスピードで歩くようになっている。たまに加賀美を見上げ、アイコンタクトまでとれるようになったのだ。
「ちょっと上から目線じゃないか?」
そんなつもりはないが、加賀美には不服だったようだ。軽く睨まれてしまった。
「すみません」
笑いを堪えて謝ると、「こら」と頭をコツンと小突かれた。
「でも本当に見違えるようです」



