四人を乗せて静かに上昇していくエレベーターの中、松村がさっきの話の続きを始める。
「星さん、今度一緒に食べに行きませんか?」
「ラーメンを?」
「あ、ラーメンが嫌なら、おしゃれなレストランのディナーでもいいですよ。ほら、この前約束したじゃないですか。デートするって」
そんな話をするにはしたが、いつもの軽いノリの延長だ。
含みをもたせた笑みを浮かべて、望が野々花を見る。きっとあとでからかわれるだろう。
「松村くんなら、私じゃなくてほかに誘う女の子がいるでしょう?」
年上年下に限らず、松村を慕う女子社員はたくさんいる。なにも野々花じゃなくてもいいだろう。
「俺は星さんとデートしたいんです」
松村がそう言ったタイミングでエレベーターが三十六階に到着した。
「ほら、着いたぞ」



