「ニーシーベンダン」

私の右耳に低い声が囁いた。
見ると、寝ていたはずの漣瀬君がこっちを見て笑っていた。
私が何て?と聞き返すと、彼は一音一音丁寧に発音してくれた。

変わった人だと思ってたけど…
漣瀬君て優しい人?

そんなことを考えながら、私は先生の方を見て、漣瀬君が教えてくれた文をそのまま発音した。

「え、えーと…
にーしーべん…だん。」

すると、何故か教室がしーんと静かになった。
この学校に来ることになってから中国語を少し予習した程度の私が答えられたことに驚いているのだろうか
…なんてのは下らない勘違いだった。

「ゴ…ゴホンっ!えーと、待田さん、そういう言葉は使わないほうがいいわね…」

先生が気まずそうに言った。