勢いよく振り返ったその子は、急に声をかけたからか驚いた顔で俺を見て来る。 「え……」 「いや、さっきからフラフラしてるからなんかあったのかなって」 「フラフラ? あ、ごめんなさいっ、その、花びら、欲しくて……」 「花びら? 桜の?」 ここは桜並木の一角だから、風が吹かなくても花びら散っている。 「ふーん」 こんなのが欲しいんだ。でも取ってどうするんだ? 手を伸ばすと、宙を浮くそれを一片手におさめられた。 「はい」