「パパ……谷口組組長が独自で開発した危険ドラッグよ。公務執行妨害じゃなくて、薬物所持の方が重く問われるんでしょう?」
自ら逮捕してほしいと自首するかのように、三村胡桃は堂々としている。
佐藤警視監は理解できないところがあった。
どうしてそこまで、と。
朔夜や月那を助けるためならまだ分かるが、なぜあまり関係のない父親までこうして助けてくれるのか。
……朔夜や月那にそれほどの想いを秘めているのだろうか。
「あたしは、早くあの組長を逮捕してほしい。
そのためになら自首だってするし、あたしが持つ全ての情報を佐藤警視監にだけなら言うわ」
「君は……三村と共依存しているのではないのか?」
「たしかにパパしかいないと依存してたわ。だけど、あたしに愛する人ができたの」
愛する人を思い描いているのか、慈愛を込めた綺麗な微笑みをする。
「朔夜くんを育ててくれたことというか、生きてることに感謝したいんです」
「……っ」
「彼のおかげであたしは間違ってるって気づきました。だから、あたしを逮捕して、佐藤警視監を解放してください」
はっきりとした声に、査問官は「……終わらせるぞ。佐藤警視監は早く三村を逮捕せよ」と言い残して去っていったのだった。



