「朔夜くん、またね!」


「……うん、また」



朔夜はこの胸の苦しさを知っていた。


今までなずなに向けられたものなのだから。


しかし朔夜はこの想いに戸惑いを隠せなかった。



「おかえり朔夜。遅かったね」


「うん、夜ご飯食べてた」


「……そっか」



月那は机の上に置かれてある朔夜の分の夕食を冷蔵庫に閉まって寂しそうに微笑んだ。


その姿を見て、朔夜は連絡しとけば良かったと強く後悔した。



最近、月那はどの相手にも自然な表情で接することが増えた。


朔夜はその訳を知らなかったが、月那の大きな成長に密かに喜んでいた。



しかし月那の目元にあるクマを見て、朔夜は思い出してしまった。


朔夜が抱き始めたこの想いは本当に良いことなのか、と。