双星の煌めきは月夜に魅せられて



だけどここは学校でもないし、暴走族に入るくらいなんだから心が広いことを信じて遠慮や謙遜は無しで話そうではないか。



「最近エレナの様子が変なんだ」


「変って具体的にどういうこと?」


「ふとした時に真面目な顔っていうか切羽詰まった?感じの顔で何か考え込んでるんだ。
アイツ、頭を使わない奴だからさ」



橋本エレナは暴走族の姫どころか暴力団組長の娘だ。


桜蘭を傘下にさせたいっていう目的があるみたいだし、組がかかってるのに頭を使わないなんてあり得ない話だ。


そもそも頭使わないならなずなを悪者に仕立てることなんてするわけない。


あなた、騙されてるよ。



「そっかー。私まだ知り合って日が浅いから、そこまで分からなかった。他には何かないの?」


「後は……お前が言ったように用事とかが多いんだ。最初はほぼ毎日来てくれたのに、気づいたら全然来なくなった」



きっと、クスリの耐性が付いちゃって何度も飲まないといけなくなったから。


違法薬物の密売や買収をしているくらいだから、彼女は重症の中毒者だ。


そんなの知られたら、心配される上に向こうの計画が水の泡になる。


そのリスクを避けるためにも、行かないのは賢明な判断だと思う。