「この面子に喧嘩売るバカもそうそういないと思うよ。羽咲に、今の会話言いふらすように言って置く」


景も由羽も見た目の良さから目立ってもいたけど、怒らせたら怖い人としても知られている。


私の大事な後輩たちにヘンな真似したらこの二人から報復があるなんて噂があったら、みんな怖がっちゃうでしょ。


「あ、俺先に行くわ」


「ん? あ、はーい。じゃあまた帰りにね」


「頑張れよー」


急に声をあげたのは由羽だ。


その目線の先には、明るい髪色の背の高い女の子。


由羽はただ今、絶賛初恋中だ。


高校の入学の日に知り合った同級生の女子、遠江那也(とおとうみ なや)ちゃんに一目惚れしちゃったらしい。


那也ちゃんは背の高い姉御肌の子で、私も友達の一人だ。


学園のアイドルくんの幼馴染とかで、もはやアイドルくんのお母さん状態。


「那也、一緒に行こう?」


「え? 司くんっ? だ、だからなんで私なんかに――」


先を歩く二人に会話が、そこまで聞こえた。