「あ、そこはなゆの気持ち次第って言うか。卒業まで待っても大丈夫だし」
「大学には行かないの? 景もなゆも、由羽も私と晃くんの後輩になるのに……」
私たち三人は、お姉ちゃんとお兄ちゃんが卒業した高校に通っている。
「進学はする。実を言うと……母さん、小雪さん、話しちゃっていい?」
景が軽く背伸びをして、ダイニングテーブルの方に声をかけた。
「いーわよ」
奏子さんから返事があった。
「俺、母さんたちの会社に弟子入りすることにした。母さんたちが作った会社を支えて行けるようになりたい」
「景、跡継ぎになるの?」
お母さんと奏子さんは、奏子さんを社長にIT企業を興した。まだまだ後継者がどうのって話はなかったけど……。
「ちゃんと働いてなゆに苦労させたくないのもあるし、母さんたちが造ったものをなくしたくもないって思って。兄さんは兄さんでやってるし、由羽はその跡継ぎだし」
「景」
お兄ちゃんが、静かな声で景の名前を呼んだ。



