景の大きな声を呼ばれて振り返ると、ドアを開けた格好のお兄ちゃんを傍らに、景が花束を抱えていた。
「景? どうしたの、それ」
「準備、出来たから……聞いてほしいことがあるんだ」
準備って……この前の? すぐには教えてくれなかったやつ……。
「なゆ、俺たちが十八になったら、俺と結婚してほしい。俺、一生なゆのことを愛していく。なゆに辛い思いも苦しい思いもさせない。嬉しさ以外の涙は流させないって約束する。だから――俺と、結婚を前提に付き合ってください!」
…………――――――え、け、けい?
いきなりのことに思考回路が停止した。
大きな花束を抱えた景が、私に向かって言ってきた内容って……。
「景、大事なことが抜けてる。お前はなゆのこと、どう思ってる?」
お兄ちゃんが静かに言うと、景ははっとしたように瞬いた。
それから、一歩距離を詰めて来た。



