「まあ、遺伝子的には優秀でしょうけど」
ふとそんなことを口にして、一瞬思考が止まった
いや、止めた
ストップ!ストップ~!!
いやいやいやふ、深い意味はナイよ~ナイナイ!
ほらほら、考えない!考えるな~~~私!!
勝手にピンク色の空想が浮かびそうになるのを自己催眠で慌てて打ち消していると
「遺伝子がどうしたって?」
頭の上から低い声がして、ビクッと肩がはねてしまった
「…悪い、そんなに驚かせたか?」
「い、いえいえいえ、何でもありません!」
たった今、口に出せないことを思い浮かべてしまった相手に声をかけられ、頭の中を覗かれたわけでもないのに、羞恥心に血がのぼる
「そうか?それにしては顔が赤いな
風邪でも引いたか?」
「は…!、いえ、大丈夫です!
それより先方はご納得いただけたんでしょうか?」
顔をのぞきこんでくる秋元の整った顔が近すぎて、思わず後ろに仰け反った
声が裏返り慌てて話をすり替える
「ああ、問題ない。今日は助かった。寺内のおかげだな」
秋元はまだ訝りつつも美季の話に応える
だが美季の意識は違うところに飛んでいた
近い!顔が近いですよ、課長~!
完璧に整った色気のある顔を間近に詰められればドキドキしてしまうのは仕方ない
そういうところはホント無神経、いやこれは無自覚というやつだ
女性ならまだしも、いい歳した男が自分の色気に無自覚とは、始末に負えんわ!
美季は心の中で突っ込み、一方で秋元に助かったと言われたことに満足していた
これで今日のお仕事終了!キャラメルマキアートが私を待ってる!!
「じゃ、行くか?」
「はい!今日はサイドメニューもいいですよね?めちゃめちゃ寒いなか、ずうっと待ってたんですよ?」
「…ああ、構わない。好きなものを頼めばいい」
いやったあ~!何にしようかな~
焼き立てワッフルはどうだろう?
クランベリージャムと生クリームをトッピングでつけてもらったら最高じゃない!
…ちょっとカロリーオーバーだけど、寒い中で待ってたから発熱のためにカロリーも燃えてるし
うん、そういうことにしよう!!
自分に都合よいカロリー計算をしながら、美季はルンルンで秋元の後をついていった



