「確かに仕事はできるけどね」
いざ秋元の直下となってみると、公私の区別どころでなく、美季の生活は仕事一色になった
今日のように休みの日に呼び出されることもしょっちゅうで、美季は自分がブラック企業に転職したのかと一時期本気で疑わなかった
だが幸か不幸か負けず嫌いな性格が、尊敬していた人間に使えないと判じられるのは嫌だと必死に食らいついてここまできた
それでも最近は、さすがにこのままではどうかと自分でも思うようになってきた
美季は結婚はしてもしなくてもいい、が、子どもは欲しい
望まぬ男と結婚するくらいなら、養子縁組みした方が良いと本気で考えている
でも一人っ子の自分に両親は婿を取って跡を継がせたいのも知っている
見合いにしろ恋愛にしろ、婿養子に来てもらうという不利な条件下で結婚を考えるには、残された時間はそう多くない、と思う
「でも出会いがないんだよね、全く。お互いに知り合って付き合いを深める時間とかないし。かと言って身近に釣り合いの取れそうな人って言ったら、年齢だけで考えれば高杉?彼女持ちだし、水沢君は重度のゲーマーだしなぁ。後輩はまだまだ頼りなくてすぐ結婚は無理。
後は課長くらいか……」
秋元課長は仕事ができて、顔もいいし、憧れではあるけれど
「秋元課長と夫婦になったら洩れなくすれ違いで離婚一直線だね。甘さのかけらもないし、
いや、家でも仕事させられそう…」
目の前にありありと浮かんだ未来予想図は
「うん、ないわ~」
一刀両断に切り捨てた
オンオフはきちんと切り替え、家の中くらいリラックスしたい!
ま、向こうも私を女として視てないだろうし、ね?



