その幸せを奪ったのは、今美季を寒空の下に待たせている、直上の上司の秋元だ

朝の6時から震えた携帯に、アラームのセットを間違えたかと思った
まだぼんやりとした頭のまま、画面をタップしたのが運の尽き

寝ぼけ眼に映る画面には、『通話中』表示の下に『課長』の文字があった

慌てて耳に押し当てると、仕事中と同じ調子で淡々と要件を告げる
取引先からのクレームに対応が追いつかない、すぐ来いと言われて言い返す間もなくプツッと切れた

「はあ~?」

思わず巻き舌で声をあげるが、すでに相手に届くはずもなく……
それでも「今日は私、誕生日なんですけど!」と悔し紛れに画面へ叫んだ

生来、生真面目な美季はそれから即座に跳ね起き、シャワー室に駆けこむ
熱いシャワーに担当者及び課長への文句を垂れ流し続けながら、一方で今後の段取りをいくつか思い浮かべてた