秋元は少し目を見開いて破顔する
美形の本気の笑顔にクラクラする美季に構わず、スッと立ち上がるとそっと彼女の背中に手を回した
広く温かい胸に顔を埋めると、秋元らしい爽やかなシトラスの香りに包まれた
深く吸い込むと、耳元に唇を寄せ囁く声がする
「私を信じてついてきてくれてありがとう。
一生、大切にすると誓うから、美季の全てを私に預けてくれるかい?」
「…いいですよ。私に課長のロマンチストなところ、いっぱい見せてくださいね」
「ええ!それはチョット…」
「ダメですよ。ロマンチックな愛を誓ったんですから。二人きりの時だけでいいですから、私、恋人にはしっかり愛を伝えてほしいんです。課長ならできるでしょ?」
腕の中で上目遣いに微笑んでみせると、ウッと言葉を詰まらせた
みるみる赤くなる顔にあららら~と思っていたら、頭を掻き抱くようにしてグッと胸に押し付けられる
「二人っきりの時だけだぞ」
少し怒ったような声が耳元に届き、私は口元が緩むのを抑えられない
背中に回した腕に力を込めて抱き着くと、彼の腕の力も強くなり、きつく抱きすくめられた
雪が深々と降り積もる中、そっと名を呼ばれ顔をあげる
黒曜石のような瞳が昏く煌めき、右手が髪を優しく梳いた
後頭部で手が止まるのを合図に、私は少しだけつま先に力を入れて背伸びする
彼が顔を近づけるのを確認して、ゆっくりと目を閉じた
腰を支える腕に力が込められて一層二人の体が重なった時、少し乾いた唇が私のそれを覆いつくした
熱い熱い口づけに雪は融けていく
赤いチューリップがパサリと微かな音を立てて落ち、真白な雪道に咲き誇っていたーーーーー
~Fin ⚘⚘⚘~



