「私は君の望みを叶えるよう、指導したつもりだが?」
「私の望み、ですか?」
そんな話、初耳だと言うと、秋元は目に見えて焦りだした
「異動した日に言ったじゃないか!同期に女と侮られない仕事をしたい、と
だから私は心を鬼にして、君を鍛えてあげようと……」
それで休日も時間外も関係なく、とにかく実力と実績を積ませようと私に仕事を振りまくり、高いレベルを要求しながら厳しく指導したのだと言う
「君を引き抜いたのは私だ。実力は把握していたつもりだったから、終業時間内で終えられない位の仕事をふったら、君はあっという間に終えてしまった
それで前の部署では実力を発揮してなかったのだとわかった
ならばとどんどん要求するレベルを上げていったが、君は必死になって私についてきた
そして乾いた砂が水を吸うように、私が教えることを自分のものにしていった
気づけばまっすぐに私に向けられる瞳に引き付けられて目が離せなくなった。その遮二無二頑張る姿が可愛くいじらしくて、その瞳に私以外の男を映してほしくない、それだけは許せないと思ったら、居ても立ってもいられなくなった
公私ともに君のそばで君を守り、その手を引く唯一の男になりたいと思ったんだ」
それで今日、プロポーズしようと決心したのだと言う
ほんとは誕生日のお祝いを口実に食事に誘うつもりが、急に仕事が入り、動転した
とにかく私の『今日』を確保したくて担当外なのに呼び立てたそうだ
そんな、思ってもみませんでしたよ
はっきり言って分かりにくい
あのシゴキが私のためだったとは……
うん、何ていうか、良くも悪くも真っ直ぐな人だったんだーーー



