【短編】サクラ色の貝殻をきみにあげる




「桜井、さすがに怒るよ。


何も知らないくせにそんなこと言うな」





たしかに私は、3人のこと知らないよ。


夏目くんたちの仲がどれだけ良いのかも、夏目くんがふたりのことどれだけ大切にしてるのかも、夏目くんがどれだけ傷付いているのかも、私は知らないよ。



それでも、好きな人が他の人を見ていることが、どれだけ苦しいかはわかってるよ。


私だって夏目くんの前で笑うの、苦手だよ。




ツンと目の奥が熱くなる。

心の奥がじわじわ痛んで、瞬きしたら温かい雫が頬を伝った。




「……夏目くんがあの子ばっかり見てるから、
私だってうまく笑えない」




言うつもりはなかった言葉がぽろりと零れて、きみは面食らった顔で私を見つめた。