『私は、この家のお手伝いさん』


その言葉を聞いてから、悟さんは目を細めて、やわらかく微笑んだ。


「……じゃあ、おかゆが完成したら、愛海ちゃんに、匠のところへ運ぶ役目をまかせようかな」


よかった。


悟さんが、私の気持ちを、すぐに理解してくれる人で。


ほっと胸を撫でおろす。


その数分後、おかゆが完成し、悟さんが完成したおかゆをコルク製のコースターに乗せる。


鍋の左右の取っ手に、濡らした布巾を置き、鍋を私に渡す。


「熱いよ、気をつけてね」


「はい、わかりました」


悟さんから鍋を受け取り、匠くんのいる部屋まで持っていく。


おかゆをこぼさないようにゆっくり歩く。


いつものスピードよりも遅い足どりで歩いたせいか、匠くんの部屋に着くのに数分もかかった。