「……うわ、けっこう熱あんな」


翔さんが帰ってきてから数十分後。


匠くんの部屋に来た翔さんと私は、匠くんの様子を見ていた。


そして、ベッドの脇にある体温計を手に取り、匠くんの熱を計る翔さん。


体温計に表示された数値は【38.5℃】。


海に行く日まで無理をしていたようだ。


風邪をひいていたのに、無理やり元気なフリをしていたのだろう。


匠くん……。


チラッと、匠くんの顔を見てみる。


ベッドの中で、低いうなり声をあげており、つらそうに呼吸している。


それに、顔が真っ赤で汗だらけ。


「……匠、今日は一日、ベッドで寝てたほうがいいぞ」


「翔、兄……」


荒い呼吸をしながら、翔さんのほうに目を向ける匠くん。


その目から、涙がこぼれていく。