そう言って、翔さんが指さしたのは、フードコートの出入り口近くの席だった。


翔さんが指さしている方向に、視線を向ける。


そこには、木製の椅子に座り、こちらを睨むような目で見ている男の人がいた。


私がいる場所から少し遠い場所にいるので、顔はよく見えない。


でも、黒い服を着ているということはわかる。


まだまだ暑い日が続いているのにもかかわらず、黒いトレーナーを着ている。


暑くないのかな。


服装を見て、違和感を覚えつつ、前に向き直る。


「まだ夏なのに、長袖の服を着てますね」


私の言葉を聞いて、翔さんがため息をつく。


「……はぁ、気にするのは服装じゃねぇよ。


目つきとか視線だろうが」


「目つきと視線は怖くないですよ」


「怖くねぇのか?」


「えぇ、翔さんよりは」