「た、たとえばって言われても……」


いっぱいありすぎて答えられないよ。


翔さんに何度、邪魔されたことか。


「た、たくさんあるので、答えられないですよ」


「たとえを言うまで、意地悪してやる」


「は……⁉︎」


無意識に顔が熱くなる。


意地悪……!


翔さん、意地悪だよ!


「お、教えるもんですか‼︎」


そう叫び、ダッシュで自室に向かった。


うしろから、翔さんのおかしそうな声と、誠さんの少し悔しそうな声が聞こえた気がした。


「やっぱおもしれぇな、あの女」


「翔兄を見ないで、俺だけを見ててよ……」


ふたりの声が聞こえた気がしたあと、勢いよく自室のドアを閉めた。


そして、ドアに背中を預けた状態で、ズルズルと腰をおろした。