そんな痕なんかあるわけがない。


「き、気のせいじゃないですか?


虫刺されの痕のようなものが見えるっていうだけですよ、たぶん!」


「そうか?」


「そ、そうですよ!」


「錯覚ならいいか……」


ほっ。


翔さんはちょっと納得いかないような顔をしていたけど、なんとか追及されないで済んだ……。


あはは、と笑い、再び歩を進める。


翔さんも匠くんも歩きだす。


「さーて、帰ったら風呂入るか。


あんたも一緒に入る?」


「は、はぁっ⁉︎


は、入るわけないじゃないですか!」


そういうことをサラッと言わないでもらえませんか、翔さん。


自然と顔が熱くなる。


私と翔さんの会話が夜の帰り道に響く。


そんな会話を、匠くんは黙って聞いていた。