アブナイ王子様たち

目からこぼれる涙が、顔に打ちつける雨水と混ざり合い、なんの味もしなかった。


普通なら涙はちょっとしょっぱい味がするのに。


まるで味覚がマヒしたみたいだ。


自分の顔が涙と雨水で崩れるのもおかまいなしにしばらく走っていると、うしろから腕を掴まれた。


私の腕を掴んできた相手は言うまでもない。


「逃げないで、愛海ちゃん。


ひとりで涙を流す愛海ちゃんを見たくないの」


「叔母さん……」


黄色い傘をさして、私に優しい言葉をぶつける叔母さん。


でもね、叔母さん。


叔母さんの優しい言葉を聞くだけでも涙が出ちゃうんだよ。