アブナイ王子様たち

私が掃除する前に、以前誰かが別荘の掃除をしていたのかもしれない。


ふぅ、と息を吐いて掃除機のコンセントを抜いたとき、翔さんに声をかけられた。


「あんた、本当に来栖川グループのお嬢様?


全然そんなふうに見えないんだけど」


「…………」


翔さんに話しかけられても、無言を貫く私。


「なぁ、なんで人が話しかけてんのになにも答えないわけ?


失礼じゃね?」


「…………」


「おい、なんとか言えよ」


「…………」


若干イライラした声が届いても、私は聞こえないフリをし続けた。


コンセントを束ね、翔さんの横をスッと通りすぎていく。