人間消去アプリ

「今の話って?」


「ほら、なんか話してたじゃん。


トラックがどうのこうのって」


私のその言葉で、挨拶をしてくれた子がコソッと私に耳打ちをした。


「あのさ、大声では言えないんだけど……今朝、ユキエが交通事故が起きたところを偶然見ちゃったんだって」


“ユキエ”というのは、顔を真っ青にして体を震わせている子のことだ。


「……交通事故?」


「うん……。


私、誰かがトラックにひかれたところを見たの」


顔を青ざめたまま、ボソッとつぶやくユキエ。


よほど思い出したくない出来事だったのか、私と目を合わせようとしない。