「幸子ちゃん?」

「は、はい」

 隣の席の神徳君に名前を呼ばれたのだけど、いきなり”ちゃん”付けで呼ばれたのでびっくりしちゃった。嫌ではないけども。

「かっこいいよね、彼」

「彼って……?」

「福山ちゃん」

「あ、ああ……」

 神徳君って、人の名前を”ちゃん”付けで呼ぶのが好きみたい。

「でも、彼を好きになっちゃダメだよ?」

「す、好きにだなんて、そんな……」

 と言ったものの、実はちょっと好きになりかけてるかもしれない。だって、福山先生って本当に素敵だから。でも、誰かに感じが似てる気がするのよね。誰だろう……

 ゲッ。お兄ちゃんだ。よりによって、鬼畜のお兄ちゃんと福山先生って、ちょっと似てると思う。特に、目が怖そうなところとか。あくまで私の中では、だけど。

 そんな事よりも……

「どうして好きになったらいけないんですか?」

 それが気になった。

「福山ちゃんには恋人がいるからさ。しかもこの学校の先生で、養護の美沙ちゃん、こと春田美沙子先生」

 へえー。それは残念、というよりびっくりだわ。あ、その恋人って、もしかして……

「その人って、お化粧は濃いめだけど、すごい美人の先生ですか?」

「ん……たぶんそうだと思うよ」

「あ、やっぱり違うかな。お年が、福山先生よりだいぶ上みたいだから」

「じゃあ、その先生で間違いないよ。確か美沙ちゃんの方が8歳上だから」

「えーっ、そうなんですか?」

 今朝、職員室で座ったままだったもう一人の女の先生は、福山先生の恋人で、養護の春田先生なんだ。8つも年下の彼氏だなんて、なんか、素敵だなあ。