コースで次々と出されてくる料理たちは、どれも絶品で舌がしびれるほどの美味さだった。
「普段はあまりこのような本格中華は食べないのですが、朝井さんはいかがですか?」
「中華はよく食べますけど、餃子とか天津飯とかばかりで、こういう高級感のあるものは滅多に……お恥ずかしいです」
「いえ、わたくしも餃子は好きです。時たま家で手作りもしていますよ」
「料理なさるんですね!」
 なんとなく結城さんに対し抱いていたイメージ。
 それは、研究室の中で生息して家に帰るのは稀。自炊などしない、基本はカップ麺……な理系男子というもの。
 だが案外そうでもないらしい。

 それからしばらくは自炊の話。
 研究が忙しいときはやはり外食やインスタント食品を食べるしかないらしいが、時間のあるときは蕎麦を打つこともあるという。
 これにはかなり驚かされる。

「わたくしは凝り性なのだと思います。子供の頃から、一度ハマると病みつきになる性質でした。小学生の時、美術に夢中になったときは、ルーヴルに本物のモナリザや『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』を見に行きたいと頼んだものです」

 後者の絵画の名前には、一瞬、ピンとこなかったが、少し考えていわゆる『ナポレオンの戴冠式』のことだと合点した。
 わざわざフルネームで覚えてるなんて、変わり者だ。

「……で、それは実現したんですか?!」