店員さんに通され、壁にずらりと中国美人画の掛かった店内の座席に案内される。すでに結城さんは到着し、メニューを眺めていた。
「ご無沙汰しております、結城浩太郎です」
 さっと座席から立ち上がり、美しいお辞儀をする姿は、さながらマナー講師だった。上下濃紺のスーツでびしっと決められている。

「お久しぶりです、朝井です」
 つられて私もお辞儀をする。

 それからしばらく私の頭のてっぺんから足元までじっと見つめて、

「……今日のお召し物も素敵ですね。鮮やかな黄色のスカートが、明るく春らしいと思います」

ぎこちなく私の服装を褒める彼。