でも意外だったな、母が恋愛結婚でもいいって思っててくれたなんて。
 あの田舎も、少しは時代が進んできたってことなのかな。
……なんて思っていると。

『なんだ、そういうことなの……。
でも、あんまり遅くなるといい人が見つからなくなるわよ。
私の若かったころは、25を過ぎて独身だと強制的に見合いさせられたんだから。
早く孫の顔を見せてね』

 耳にタコができるほど言われたフレーズが並びたてられていた。
 孫の顔、だなんて。
 みんながみんな子供を望んでいるわけでもないのに……。
 溜め息がでるけれど、「戻ってこい」だとか「今度そっちに行くから」と言われなかっただけ良しとしよう。


……と、その時はこの母とのやり取りは成功に終わったと思い、次の日からはすっかりそんなやり取りがあったことさえ忘れてしまっていたのだった。