こうして翔馬と付き合うことになった、23歳の春の夜。

 まだ2回しか出会っていないというのに、すっかり翔馬に心酔していた。信用もしていた。

「ごめん、持ち合わせが足りなくて……今夜はおごってくんない?」

 財布の中をわざとらしく覗き、母性本能をくすぐる困り顔で支払いを任せてくるその様子さえ、愛おしかった。

 飲んだ帰り、そのまま私たちは一晩をホテルで共にした。

 翔馬の甘い言葉の連続につられて。

 翔馬の出すフェロモンに惹かれて。

 出会ったばかりなら絶対体を許すことなどありえないのに、出会った回数がたったの1増えるだけで、こうも易々と釣られてしまうのだ。

 翔馬の行為は、いかにも慣れた風だったが、とにかく独りよがりだった。

 パートナーの私の感情などお構いなしな、自己満足の行為。

 それはまさしく私たちの関係を象徴する一晩だったのだが……

 私は痛さを黙って堪えた。

 むろん、宿泊代も私が出した。



 恋人同士となったというのに、なかなか翔馬は連絡をくれなかった。

 私は毎日おはようとおやすみのメッセージを送るのに、翔馬が返信をくれるのは多くて4日に1度。

 デートは必ず「今夜どう?」のパターンで、3回目のデート以降は毎回私が支払った。