「俺の趣味はね、筋トレなんだよ~」

 おもむろに袖をまくり、腕の筋肉を盛り上げて見せた7番さん。
 彼の筋肉のこぶを見て、私は素直に目を丸くした。

「すごいです! めちゃくちゃ鍛えてるんですね」

 私は運動音痴だし筋肉量もないから、純粋に筋肉の多い男性には頭が下がる思いだ。
 それから私が口にしたいくつかの褒め言葉に気をよくしたか、

「嬉しいな! 朝井さんだけは特別に、触ってみてもいいよ~」

ぐいっ、と7番さんは私に剥き出しの腕を差し出した。すぐ目の前に、太陽光によく焼けた筋肉の塊がある。

 ちょっとここで私は引いてしまった。

 いくら自慢の腕でも、見知らぬ女性にすぐ触らせちゃう?

 そう思いかけて、私はぶんぶんと頭を振る。

 いやいや、ここは婚活。

 戦いの場だ。ちょっとでも気に入ってもらえるよう、期待に応えなくては。

「では遠慮なく~」

 口ではそういいつつも、心の中ではかなり遠慮しています。
 私は指でつんつんと7番さんの腕を触る。

「うわ、めっちゃ硬い! カチカチ!」

「だろ? 毎日プロテイン飲んでるからね。俺なら花嫁のお姫様抱っことか、余裕」

 真っ白な歯をきらっと光らせて7番さんは笑う。不自然なほどの白さは、彼の歯がホワイトニング施術済みであることを物語っている。

 こう言われると、つい女性としては自分が彼にザ・憧れのお姫様抱っこをされている光景を思い浮かべてしまう。

「将来嫁になる人とは絶対の絶対に、筋トレとかジョギングとか、ボルダリングとか一緒にしたい、って思ってるんだ。ほら、スポーツって一人でやるよりも、一緒にやる人がいる方が楽しいだろ?」

 なるほど。それがタイプの女性欄に「元気」と書いた理由か。ということは……。