電車に10分も乗っているうちに、胸の真ん中から体の末端へ向けて、じわじわと自己嫌悪と後悔、そして男性不信の念が私を侵し始めていた。

――どうして何の罪もないお父さんにあんな風に当たっちゃったんだろう。

だとか、

――もう男の人なんて信じない。

だとか、

――やっぱり私に男運なんてないんだ。


といった思いが腹の底で渦巻いている。
 そして最後には必ず、

――これからの人生、どう生きていこう。

と自分の人生全体の先行き不透明さに絶望感が押し寄せる。

 自分が崩れ落ちていく感覚、第二弾、というわけだ。第一弾は、翔馬と別れた後だった。

 浩太郎と別れた直後には感じなかった絶望が、陽人さんとの縁談の破談と重なることで巨大な津波のような絶望感となって私を浚っていく。

 辿り着く先は、何のしるべもない人生の大海原か。

 それまで海原にだって道しるべがあると信じ込んでいた。
 たとえば「受験」「就職」「結婚」「出産」……のような標識が当然海の上にも立っていると信じていた。

 でも今になって考えれば、それは幻想でしかなかったのだ。

 この「人生」という海に、道しるべはない。
 ただ茫漠と青が広がるだけ。
 しかも時として大荒れになる。

 その海原をこれからどの方向にどうやって進むべきなのか、もう私には見えない。