「……いろんな男の人に、出会ったよ」

 かろうじて私の口から出たのはそんな意味深長な言葉。

 でもやっぱり私たちは親子だ。

 それだけで、私が社会人になって経験した出来事が、何となく伝わったらしい。

「ひばり、無理はするなよ」

「別に無理はしてないよ」

「お前は本当に結婚したいのか?」

 私の強がりを打ち消すかのように尋ねた父の声は、先ほどまでのそれ以上に真剣なものだった。
 いや、声のトーンだけではない。問う内容そのものが本質的なもので、閉口してしまう。

「……そりゃあ、私の夢だから」

「子どもの頃から父さんたちが強く言い聞かせてきたからな。女は二十歳を超えたらいい家に嫁いでいくのが仕事だと。でも、」

「じゃあ、お父さんは今さらそれが間違いだったって言いたいわけ!?」

 そこまで来て、堪忍袋の緒が切れた。ぶっちーん、と打っ千切れた。